連載コラム スターリンク株式会社 執行役員 後藤雄一郎

【第1回】家賃債務保証とは何か居住用と事業用は「全く別物」

経営リスクを最小化

賃貸経営において、家賃債務保証会社(以下、保証会社)の利用は一般的になりました。近年は、居住用賃貸だけでなくオフィス、店舗、倉庫、貸地などの事業用物件でも利用が広がっています。しかし、同じ「家賃保証」という名前でも、居住用保証と事業用保証は全く別物なのです。

保証会社の「ほしょう」は、損害保険で使われる「補償」ではなく、「保証」です。補償は、事故や災害などを前提に、発生した損害を契約に基づいて埋め合わせる考え方です。これに対して保証は「この賃借人であれば契約上の債務を履行できる」と審査し、問題ないと判断して引き受けます。そのうえで、万が一その判断どおりに債務が履行されなかった場合に、契約や約款で定めた範囲の責任を負います。

保証会社の役割は、事故を防ぐために審査し、万が一の際には約定された責任を負い、督促、交渉、明け渡し、原状回復を通じて、賃貸経営上の損失を最小化することです。保証会社は、保証履行を前提に成り立つビジネスではありません。審査が不十分であれば、回収困難な債権が積み上がり、将来の保証履行能力にも影響します。そのため、審査能力と財務的な健全性が必要です。

特に事業用保証では、審査能力が重要です。賃貸人は、保証会社を単なる「滞納時の支払先」ではなく、賃借人の事業性を確認する審査機能として活用すべきです。

居住用保証は本人確認、勤務先、収入、借り入れ、信用情報などから「個人の支払能力」を中心に判断します。これに対して、事業用保証は法人の実在性から代表者、事業内容、売り上げ、利益、借り入れ、資金繰り、業歴、出店目的、事業計画、将来の継続性まで確認しなければなりません。
特に既存法人では「決算書」、新規事業では「事業計画書」の確認が欠かせません。決算書を見なければ、売り上げ構造、利益、借り入れ返済力、資金繰り余力を判断できず、事業計画書を確認できなければ事業の継続性を判断できないからです。
「提出書類が少ない」「手続きが簡単」という言葉は一見便利ですが、その手軽さが審査の質と両立しているのかを確認する必要があります。十分な資料を見ずに引き受けている場合、何を根拠に事業継続性を判断しているのか。賃貸人はそこに目を向けるべきです。

居住用保証と事業用保証の違い
居住用 事業用
審査対象 個人 法人・個人事業主
審査内容 勤務先/収入/借り入れ/信用情報 など 法人の実在性/事業内容/利益/資金繰り/事業計画 など
保証履行 滞納賃料が中心。
原状回復費も限定的
賃料が高額。残置物撤去や原状回復にかかる費用も大きくなりやすい
明け渡しまでの流れ 残置物を撤去して鍵を返却。
明け渡し後、賃主側で原状回復を実施
内装や設備、造作物、残置物を撤去し、契約で定められた状態まで原状回復して明け渡し

(出所)スターリンク株式会社

「どこも同じ」は間違い

居住用を中心に扱う保証会社がいけないわけではありません。重要なのは、居住用の仕組みを事業用にもそのまま当てはめていないかです。また「保証会社は管理会社や仲介会社が選ぶもので、賃貸人は受け入れるしかない」と思われがちですが、実際には、保証会社は賃貸人が選定できます。事故が起きたとき、最終的に損失を受けるのは賃貸人だからです。
だからこそ、保証会社は賃貸人が主体的に選定すべきです。「居住用で名前を知っているから」「保証会社ならどこでも同じだろう」と考えるのは間違いです。
居住用保証と事業用保証は全く別物です。その前提に立ち、事業用の審査機能と事故対応体制を備え、保証内容や履行条件が明確な保証会社を賃貸人自身が選ぶことが、家賃保証選びの第一歩になります。

出典:全国賃貸住宅新聞 2026年7月6日 第1707号

スターリンク株式会社 執行役員 後藤雄一郎
ライタープロフィール
スターリンク 後藤雄一郎 執行役員 大手金融機関、上場企業グループ会社で代表を務めた後、事業用家賃保証事業の創業メンバーとしてスターリンクに参画。審査、約款設計、保険連携、事故対応実務に携わる。
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