【第5回】保証会社は物件オーナーが選ぶ情報が、損失のリスクを減らす
これまで4回にわたり、居住用保証と事業用保証の違い、保証を使わないリスク、約款の重要性、事故対応と平時活用の実例をお伝えしてきました。
最終回でお伝えしたいのは、「保証会社はどこでも同じではない」ということ、そして物件オーナーや選定を任された管理会社が情報を取得・精査し、自ら選ぶべきだということです。
| 回 | テーマ | この連載で伝えたこと |
|---|---|---|
| 第1回 | 居住用と 事業用の違い |
同じ家賃保証でも、審査・事故対応は全く別物 |
| 第2回 | 保証を使わない リスク |
明け渡し遅延や原状回復費用不足などの損失を防ぐ |
| 第3回 | 約款の重要性 | 「保証対象」と「実際に保証される」は同じではない |
| 第4回 | 事故対応と 平時活用 |
早期解決だけでなく、誘致・保証金見直し・賃料増額にも活用 |
| 第5回 | 保証会社の 選び方 |
情報を取得・比較し、物件オーナーが選ぶ |
情報を得て、比較し、自分の物件に本当に必要な保証を物件オーナー自身が選ぶ。
事業用保証は今や、信用力の高い企業にも使われ、保証金を抑えた募集や賃料増額など、リーシングや入居中の賃貸条件の見直しにも活用されています。ただし、それには保証金の債権保全機能を補完できる約款と、事故時に実際に動ける体制が必要です。
昨今、原材料費や人件費、金利など事業環境が変化しており、これまで問題なく支払えていたテナントでも、利益率や資金繰りが変わる可能性があります。
だからこそ、「知っている会社だから」「これまで事故がなかったから」と保証会社選びを怠ったり、任せきりにするのは危険です。保証額が大きいことは物件オーナーには安心材料でも、保証会社にとっては1件の事故による損失額が大きくなる要因にもなります。
2008年には、家賃保証事業を手がけていた、当時東証マザーズ上場だったリプラスが破綻しました。上場会社であっても経営破綻の可能性がないわけではなく、知名度や会社規模だけで安心とはいえません。
上場会社であれば、IR(投資家向け広報活動)で貸倒引当金や求償債権の推移を見ることも有効です。引当金を積むこと自体は、リスクに備える健全な対応です。一方で、求償債権の増加や貸倒れの発生状況が、引当金の積み増し額が大きくなっている一因とみることもできます。
保証会社を選ぶ立場によって重視する点も違います。物件オーナーや管理会社は保証内容や事故対応を重視する一方、仲介会社やテナントは保証料、審査の通りやすさ、手続きの簡便さなどを重視しやすい。便利な保証が、必ずしも賃貸人にとって最も保全力の高い保証とは限りません。保証会社からの販促手数料の多寡だけで選ぶ場合も同様です。
だからこそ、正確な情報を取りにいくことが大切です。業界新聞、展示会、セミナーに加え、「事業用 家賃保証 約款」「事業用 家賃保証 原状回復」「事業用 家賃保証 破産」「会社名 IR(貸倒引当金)」などで検索し、約款やIRなど正式な資料を確認する。候補各社に同じ質問項目を示し、保証上限、終了条件、原状回復、法的手続き費用、破産時の扱い、事故対応体制について書面回答を求める。保証会社に他社との約款比較を依頼する場合も、説明だけでなく根拠となる条文を示してもらうとよいでしょう。
家賃保証は、単なる「滞納時の支払い」から、賃貸経営を支えるリスク管理に加え、リーシングや賃料設計にも活用できる手段へ変わっています。情報を得て、比較し、自分の物件に本当に必要な保証を物件オーナー自身が選ぶこと。それが、将来の損失を避ける一番の近道です。
(最終回)
出典:全国賃貸住宅新聞 2026年11月2日 第1723号
- ライタープロフィール
- スターリンク 後藤雄一郎 執行役員 大手金融機関、上場企業グループ会社で代表を務めた後、事業用家賃保証事業の創業メンバーとしてスターリンクに参画。審査、約款設計、保険連携、事故対応実務に携わる。