【第3回】解決策(仕組み理解)保証の厚さは「約款」で決まる
前回は、事業用保証では交渉力や事故対応ノウハウまで含めた保証会社選びが重要だとお伝えしました。今回は、その違いが表れる「約款」を整理します。結論から言えば、「保証範囲に含まれること」と「実際に保証履行されること」は同じではありません。「24カ月保証」「48カ月保証」「原状回復費用も保証」と表示されていても、保証の厚さは判断できません。最大保証枠とは別に、原状回復費用や残置物撤去費用に個別上限や支払条件が設けられている場合もあるからです。
パンフレット、ホームページ、広告、営業担当者の説明は商品を知る入り口です。しかし、事故時に何が、いくら、どの条件で保証されるかは、契約書や約款、特約を確認しなければ分かりません。約款にない内容まで当然に保証されると考えるのは危険です。
ここでも居住用と事業用の違いが重要です。居住用は滞納賃料が主なリスクで、原状回復はクリーニングで済み、残置物も動産に限られることが多いです。一方、事業用では店舗・オフィスの原状回復や造作物・産業廃棄物の撤去など、賃料以外の損失が大きくなります。居住用を前提に設計・運用された保証が、そのまま事業用に当てはめられていないか確認が必要です。
事業用保証でも、原状回復を条件とせず鍵返還だけで明け渡し完了とするなど、居住用の退去実務を前提にした条件が残る例があります。商品名が事業用でも、約款まで事業用リスクに合わせた設計とは限りません。
例えば、保証期間が「入居から退去明け渡しまで」とあっても、明け渡し完了の定義で結果は変わります。鍵返還で終了するのか、原状回復完了まで続くのか。保証会社への更新保証委託料の不払いで保証が終了する約款もあります。法的手続費用も同様で、「保証対象」でも明け渡し訴訟の提起が条件なら、訴訟前の任意交渉に要した弁護士費用は対象外となることがあります。原状回復費用も、賃借人との合意がなくても保証されるのか、残置物は動産だけでなく造作物まで含むのかによって、実際に保証履行されるか否かが変わります。
| 確認項目 | 約款で確認するポイント | 特に注意したいこと |
|---|---|---|
| ① 保証上限と項目別上限 | 最大保証枠とは別に、各保証項目の上限設定があるか | 「24カ月保証」でも原状回復・残置物・法的費用等が同額とは限らない |
| ② 保証期間と終了条件 | いつからいつまで保証され、途中終了する条件があるか | 保証会社への更新保証委託料の不払い等で保証終了とならないか |
| ③ 明け渡し完了の定義 | 「明け渡し完了」の定義が原契約の定め通りとなっているか | 鍵の返還だけで終了するのか、原状回復完了まで含むのか |
| ④ 法的手続費用原状回復費用の履行条件 | 支払対象となる条件・必要な合意や手続きがあるか | 訴訟提起が必要か、任意交渉の弁護士費用も対象か、賃借人の合意が必要か |
| ⑤ 賃借人破産時の保証 | 破産・民事再生等でも保証が継続するか、上限はいくらか | 保証される条件が明文化されているか |
(出所)スターリンク
賃借人が破産した場合の保証も重要です。家賃保証は、保証会社が保証履行した後に賃借人へ求償することを前提とする仕組みで、事故による損失を補償する損害保険とは性格が異なります。破産により求償が困難になる場合、破産後の債務を保証対象外としたり、保証範囲を制限する設計もあります。一方、破産時の保証範囲を約款に明文化する会社もあります。
重要なのは、「保証対象外と書いていないから保証される」ではなく、破産時の保証内容が明記されているかです。破産申立て後は保証責任を負わない約款もあります。
保証会社を比較するときに見るのは、保証料や最大保証月数だけではありません。「何を、いつまで、いくら、どの条件で保証するのか」です。
表の5項目を約款で確認し、不明点は口頭説明だけで済ませず、書面回答や特約で明文化できるかまで確認することをお勧めします。
出典:全国賃貸住宅新聞 2026年9月7日 第1715号
- ライタープロフィール
- スターリンク 後藤雄一郎 執行役員 大手金融機関、上場企業グループ会社で代表を務めた後、事業用家賃保証事業の創業メンバーとしてスターリンクに参画。審査、約款設計、保険連携、事故対応実務に携わる。